地獄

思い出し話その一。小学校六年生の被服実習の時間のこと。(漫画読み介さんは志村貴子望月花梨あたりでどうぞ。)私はとっとと課題のエプロンを仕上げて、退屈しがてら隣の男の子の手伝いをしたり、茶々をいれたり、小さな袋を意味もなく作ったりしていた。(その子とは授業中に喋ったりくすくす笑ったり仲良くしていた。二人ともそこそこ勉強ができるもんだから、「ねえ、ちょっと、あれ」「あー、ほんと」「言う?」「うーん」「センセイ、その字、間違ってます」とか。今思うと感じ悪いな。そんな感じの毎日。)だらだら教室でエプロン作りの作業をして、ミシンの工程まで辿り着いた時、「ねえ、被服室、一緒に来てよ」て言われた。好きな子に一緒に行こうと言われたら被服室だろうが地獄だろうがどこだって嬉しいに決まっている。(その後、ほどなくして被服室が地獄の一丁目になるんだけど、それはまた別の話。)「えー、自分じゃ針に糸を通せないからでしょ」「うん」「とっとといってきな」なんつって私は教室に残った。「あー。ついて行けばよかった」ってひとりになった教室で思った。
大体こんなことを鮮明に覚えている辺り、もう駄目だ。