歌姫

思い出し話そのニ。小学校六年生の話の続き。地獄の一丁目(この話はまた後日)を経てクラスに所属する場所がなくなった。事態をうまく飲み込めず、元いたグループの比較的穏健な子に「何があった?てゆっか私が何かした?」と尋ねたりもしたけれど、「アッ子ちゃんが優しいからってつけこむつもり?」とか何とか責められて、「(まあそいういつもりだけど)あー、よくわからないけどごめんごめん。」とか何とか。そうなったら給食をひとりで食べるのは目立つかなあ、と見渡した。そして私がよすがとして選んだのは、クラスに唯一いた無所属のアナーキスト。マライアキャリーを見る度に彼女を思い出すから、たぶんマライアに似ていた。私がクラスでいちばんかにばんめに勉強のできる女子だったとしたら彼女はクラスでいちばんかにばんめに勉強をしない女子だった。同じクラスに彼氏がいて、私がささやかにいちゃついていたレベルではないことをしていた、と思う。「オーさん(わしの渾名)もやっちゃえばいいのに。」「や、ありえないっす。ないっす。」そういや自転車にニケツで彼女の家に遊びに行った時も、当然のように彼女の彼はそこにいたなあ。マライアは小さいこどもたちの面倒見もよくて、乱暴に泣かすことも優しくいたわることもできた。私はその優しさに甘えて、何かあったらカップルのおまけにちょこんと入れてもらっていた。結局「いいこ」にしていた私を万引きに誘うこともなかった、や、あったか?まあ強要はされなかったし、互いの世界を侵すようなことはしなかった。私がそうやってお邪魔虫ライフで身を守っていた頃、隣にいた男の子は違う女の子たちとクスクス笑って楽しそうだった。「あー。」
私がいかにしてスポイルされていったかをお送りしております。