秋山

届かない手紙を書く秋山さん(仮名)の話。私は秋山さんがそう嘘を言っているとは思わない。某大学に通うというのも法螺なんかじゃなく、ましてや聴講生だというのなら、事実としても不思議はない。どちらかというとそこは受験偏差値の高い学校の中では紙一重な方々の多い学校だという印象なので(私の数少ない経験、ていうか偏見に基づいて)むしろ違和感のない話だと思う。自分のことを棚にあげちゃうと、お勉強ができて社会性の乏しい人間なんてごまんといるわけで。考えてみたら、秋山さんの場合、おかしな人がおかしなことを言っているのではなく、おかしな人が普通のことを言っているだけなのかもしれない。持ち物や振る舞いや服装がほんの少し変わっているからといって、言動の全てを虚妄と受け取ることの方がおかしいのかもしれない。「届かない手紙」も目的のはっきりとした文書かもしれない。そうなるとおかしなのは秋山さんではなく、秋山さんのおかしな部分を増幅させて感じているこちらの方だ。こんなことよくある話かもしれないが。とはいえ理解しがたい行動が多いことは確かであるからして、ちと怖い。
実際のところ届かない手紙を書いているのは私の方です。