○んぽは下品すぎるな

あの恋は一種の難病で、治る機会を逸したまま私は老いていく。
それは故意で、自分を直らぬ機械に仕立て上げ過去にそっと置いていく。
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また見知らぬ他人が彼に見えて、彼でないことを判っていても彼に見える。十年とかそのくらい前、雑踏を見下ろしながら「こんなに人がたくさんいるのなら一人や二人くらい彼であってもいいじゃないか神様のケチ」と愚痴った罰がはがれない。もう彼の顔を忘れるくらい人違いを繰り返している。この悔しさを何と喩えよう。「千に一つ」と願ったことが、「コウガシャに一つ」くらいと思えるようになってきた。不完全が補われる可能性は、ゼロではない。ゼロではない、という幻に生かされている。
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コンビニの前で「チリチリ」と書かれたのぼりをぼうっと見ていたら、「モリモリ」が風で裏返っていたのだった。「さんぽ」の楽譜を裏から読んでしまったとき以来の、ごく軽い衝撃。