片足

tanpak2006-02-23

実家にいる愛猫は片足がある。片足があるけどもう片足がない。三本足がふつうだから、もし四本あったら「足の一本多い猫」になる。三本の経緯を辿れば、三本足になったから生き延びることができた、と言うこともできるし、三本足にしてまで無理矢理生かしたとも言える。けどどっちも誰も言わないし誰も考えない。首の後ろが痒いとき顎の下が痒いとき、痒い顔をして、ない足で掻く。あ、痒いんだって気付いたら人間の手が掻く。補っているとすら思わない。
もげかけの足を切る手術をして、エリザベスカラー姿でうちにやってきて、哀れというより面白くて笑った。そしたら彼も、エリザベスカラー(傷口を舐めさせないためのカバー)を超えて舐めるし、届かなければエリザベスカラーの縁で掻く。「賢いけど駄目じゃーん」って笑いながら医者から更に巨大なエリザベスカラーをもらって、カラーの縁にガーゼを巻いて緩衝させて、珍妙な姿に「可哀相だけど面白ーい」って。足音はとたんとたんというけれど、歩くし、走る。顔がかわいい。声がかわいい。性格がかわいい。しぐさがかわいい。たまに吐くのが憎たらしい。
足が一本ないくらいでは励まされたりするものか。