切片

最近表情に苦悩の影が見えるお洒落なエフさん(仮名・常連さん)のこと。私はお洒落なエフさんのことは嫌いではない。醸す空気がどれだけ険悪だろうが、声が聞き取りにくかろうが、憎めない気がする。(確かに当初はその振る舞いに「何か私が失礼なことをしましたかしら?」と不安にさせられたりもしたが。)ゴキゲンな人は周りを愉快にして、フキゲンな人は周りを困惑させる。それはそうだ。それはそうだけど、だからといってそれは善し悪しではない。いつも必ず不機嫌(そうにみえるだけかもしれないし、実際に機嫌を損ねているのかもしれないし、別にどっちでもいい)ということ自体が私には面白い。しかもお洒落だし。だからといって隙がないってわけでもないし。彼の日常の断片のそのまた欠片だけを見てどうこう言うのも失礼な話かも知れないけれど、まあ、そんなものだからこそ、愛すべきキャラだなあと勝手に思ったりもできる。正直言って、一年ほど姿を見せない間「エフさんはどこでどうしているのかなあ」って考えたりもしていた。
接客するこっちは適度にゴキゲンでいるのが仕事だけれど、快適を提供するのはこっちの仕事だけれど、必ずしもお客さんにゴキゲンな態度をとってもらわなきゃならんってもんでもないから、「お客さんが心の中の薬丸(ホリ)で『これ美味しい』って呟いてくれたらそれでいいや」ってくらいのもの。