素描

寝覚めのまぎわに汽笛の響き。まだ遠い意識の向こうで低い音が重なりあうのを、聞いたような気がするが。ほんとうのことか夢のことか判然としない10秒前の遠い記憶の繰り返し。まだ雨は降っていない、曇天の下の港をカーテンの隙間から覗いて、湯を沸かしにキッチンへ。新聞を手にした頃にはたぶん目が覚めてきて、確かに寒いけれど冷え込んではいないと今朝の空気を理解していた。キャベツのスープを温めて、コーヒーを掩れて、ヘッドホンで音楽を聴く。
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両親と会食。「男はいないのか?女もいないのか?それじゃあナニか、お前は孤独と仲良くしておるのだな。ひとりでおたくをしておるのか。」そんな身も蓋もないことを言われても、答えようがない。少なくともお宅に引きこもれるほど豊かではありませんので、はつかねずみのように働いておりますよ。摩擦に弱い芋虫だから、何にも触れたくないの。なんてな。ファミレスのランチョンマットにしこたま落書きをしながら、専らの悩みはこの週末に洗濯物が乾かないであろうことである旨お伝え申し上げる。